アクタージュについて語る 阿佐ヶ谷編

色々な事があった

新しいブログを立ち上げてみまして、その一番最初に語りたいのは漫画アクタージュについてです。

まず、この漫画の話をするにあたって最初に触れなければいけない事があります。

アクタージュという漫画はジャンプに連載されていましたが、この記事を書いている2021年8月8日現在ではジャンプにこの漫画は連載されていません。

なぜなら、2020年8月8日。丁度今この記事を書いている1年前に原作者であるマツキタツヤ氏が強制わいせつ罪によって逮捕され、その後連載の打ち切りが決定したからです。

その事件について語るのはこれからの記事の趣旨に反するので細かな話はしませんが、当然やってはいけない事です。許されない。

しかし、俺としては作品とその作者は別であり、あくまで『アクタージュ』という作品そのものが好きなのだと。そう言いたいわけです。

なので、色々と思う部分がある人も当然いると思いますが、少なくともこのブログの記事では事件云々の話ではなくアクタージュという作品の感想やら面白さについて書いていきます。

もしかして、もしかしたらこれを読んでいる方の生きている時空では連載再開されているかもしれない。されてないかもしれない。たぶんされてない。されてたらいいな。

阿佐ヶ谷芸術高校映像科へようこそ

まず最初に、アクタージュという作品について触れる前にまず語らなければならない作品がある!!

というわけで。

2017年9月号に読み切りとして掲載されたアクタージュの前身というべき作品『阿佐ヶ谷芸術高校映像化へようこそ』の話。

読み切り版アクタージュ……と言っていいとは思うんですが、この作品には夜凪は登場しません。

登場するのは黒山さん、雪ちゃん、そして朝野市子(いちご)ちゃんです。

結局ついにこれが本編と地続きの世界なのかパラレルなのかが語られる事はありませんでしたが、読み切り版の設定では黒山さんが阿佐ヶ谷芸術高校(略)の非常勤の講師としてお金稼ぎに来ていて、そこに雪ちゃんが入学してくる。という話です。

アクタージュの前日譚的な話ですね。

登場人物のアクタとの違い

この作品時は黒山さんが30歳、雪ちゃんが15歳なんですがアクタージュでは黒山さんが35歳で雪ちゃんが20歳になっています。

一応2人の年の差は同じく15歳差。阿佐ヶ谷の5年後がアクタージュなのかな?という感じです。

もう1人のアクタージュ登場キャラである朝野いちごちゃんですが、アクタージュでは『朝野市子』という名前で登場します。

羅刹女編で大人の女優となって登場する市子さんですが、アクタージュでは『7歳から15歳までの芸名がいちごちゃん』とあるので、高校入学のその年に改名という事になります。

さらに、15歳の時になにやら大きな賞を取ってステップアップしたと描かれていますが、阿佐ヶ谷時ではそんな風になりそうにないというか7歳から芸能活動を続けている風に見えないような気もします。

阿佐ヶ谷でも朝ドラに出てた。みたいな描写はあるんですけどね。

なので、まぁ似たような設定ではあるもののそれはそれ。これはこれ。という感じでしょうか。

内容とか感想

物語は雪ちゃんを主人公として進んでいきます。雪ちゃんの母親がかなりのクズ気質で、娘が家にいるのに『独身だ』とウソをついては男を次々連れ込むという。アクタシリーズに出てくる大人の女性はだいたい男運が無いというか男性付き合いに難有りが多いですね。

夜凪母はだめんず好きだし(たぶん)花子は知らなかったとはいえ不倫だし。たぶん夜凪もだめんずに引っかかるよ。間違いなく。

で。割りと暗い幼少期を過ごした雪ちゃんが、本当に映画が撮りたいのかどうなのかもわからないままに阿佐ヶ谷(略)に入学。するとそこで教師を務めていた黒山さんと出会います。

世は正に大映像作家時代だ!!お前らこんな時代にこんな学校に何しに来た!!

といきなりぶちかまします。尖っています。ロックです。アクタの時の黒山さんもこんな感じですが、もうちょっと丸いような気がします。

何しに来たって勉強しに来たんですよ。とんでもねぇ事言う教師です。

この時は若かった。とか言い訳があるかもしれませんがこの当時ですでに30歳。このファンキーさは少し社会性が足りないような気がします。

黒山先生の『お前らこの学校に何しに来た』という突然の問いかけに返事をする生徒。

映画監督になりたくて。スターウォーズみたいな映画が撮りたくて。

俺はこの手の学校に入学した事ないですが、いいですね。模範的回答というか、こういう生徒は多そうじゃないですか。

それの返答に対してブチ切れるやや頭のおかしい黒山先生。厄介です。

学校に来たら映画監督になれるの。へ~すごいね!とか、なんで撮りたい映画聞いて既存の作品の名前が出てくるんだよ!など、ガチの厄介クリエイター気質を無修正で生徒にぶちまけます。なにこの学校怖い。

そして雪ちゃんにも『お前は何しにこの学校へ来た?』と尋ねるモンスターティーチャー黒山。言いたい事言いすぎなんじゃないですかね。ポイズン。

昔から映画が好きで。観るのと撮るのと違うから。そしたら、いつの間にか『世界ってなんだろう 自分って何だろう』そんな事ばかり気になっちゃって。それで映画を撮ってみたいなと少し思った。

と話す雪ちゃん。

阿佐ヶ谷の雪ちゃんは母親が男を連れ込む度に放置され、その都度部屋で閉じこもっては映画を見ていたようです。その中でこういう考えに至ったのでしょうか。

世界って何だろう。自分って何だろう。40年生きてきましたがその答えはまだ見つかりません。たぶん、死ぬとの時までわからないままでしょう。

「変ですよね。すみません」と謝る雪ちゃんに対して

「手前の価値観を他人の物差しで測って謝るな。殺すぞ」

と返す黒山。言ってる事は良い事っぽいですが謝ったら殺されます。とんでもない。

そして、その理不尽な言葉になぜか心を打たれた雪ちゃん。思わず

私を弟子にしてください!!

この狂人の弟子に……?雪ちゃんもやや男を見る眼がアレかもしれません。

その後、厄介教師からの課題で適当に決められた班で映画を作成する事になった雪ちゃん。班員はスターウォーズ山田と朝野ちゃん。

各々が撮りたい映画のざっくりしたイメージを話す中で、何も思いつかない雪ちゃん。

自分には何もない。空っぽなんだ。

悩みながら歩く雪ちゃんは、偶然にも黒山さんと出会い、黒山さんが撮った映画を一緒に見る事になりました。タイトルは『真夏の雪』だそうです。

白のワンピースを着た女性が主人公らしいその映画は、1人の女性の日常をその恋人の視点から描いた映画。

『たんぽぽ』もこんな映画だったような……。と思ったところで、なんとその話は単行本にはなっていないという事に気づきなんだか悲しい気持ちになりました。せめてそれくらいはお願いしたい。マジで。

ちなみにこのシーンの横の柱には『左門君はサモナー』の告知が描いてあるんですが、狙ったんでしょうか。なかなか粋な話かと思います。偶然かもしれないけど。

2人で映画を見て、その後居酒屋に行き、この映画の主演を務めたという元カノの看護師の女性と同席する事に。

その席で「世界とは何か自分とは何かオレ達はみんなそれを探し求めている お前だけじゃねぇのさ」と雪ちゃんの胸倉を掴みながら熱く語る黒山さん。さらには

などと言い始めます。淫行です。度し難いですね。

雪ちゃんの作りたい物

黒山さんの熱い説教を受け家に帰るも、やはり何も思いつかない雪ちゃん。するとそこに母がやってきます。

どうやら『お友達』が家にくるようで、部屋から出てこないように指示される雪ちゃん。

電気を消して身を潜める。だって私はどこにもいないから。

悲しいシーンですね。映画にいい思い出のある女性があまり登場しない漫画アクタシリーズ。主に現実逃避の手段として描かれる事が多い気がしますが、またそこから芽生える感情もあるのかなと思います。

母に『いない者』とされ息を潜め暗い部屋でヘッドホンをしながら映画を見るだけの女の子は、果たして何を思うのか。

自分の中にある自分の撮りたい世界を探す雪ちゃんは、黒山さんに連れられて行ったCM撮影の現場で偉い人をぶん殴りってしまいます。

「あそこで思わず手が出ちまう それがお前という人間だ」

自分を殺すな』『それが人生だ』

黒山墨字という映画監督のその人生哲学。シンプルな考え方で素晴らしいと思います。

そんな言葉を受けて雪ちゃんが決意した撮りたい作品。

私は私と私の世界から逃げてきた。

決意を胸に秘め、雪ちゃんが撮った作品とは。逃げずに向かい合った世界とは……。

それから

雪ちゃんが覚悟を決めて撮った作品をみんなに公開し……。という形でさらにお話はクライマックスに向けて進んでいきます。

こうね。ほら。まだ読んでない人とかも当然いると思うので、その辺のオチは実際に買ってみて確かめよう!(2017年9号)みたいなね。そういうアレ。

この阿佐ヶ谷の読み切りを初めて読んだ時に、なんて面白い漫画なんだと思ったんですよ。この2017年当時の連載作品を見てみると、まぁなかなか凄い顔ぶれなんですけどね。

ワンピ、銀魂、鬼滅、ヒロアカ、ハイキューにボルト。約ネバブラクロソーマなど。

そんな連載陣の中でも、面白い!と感じました。なんというか、良い意味でジャンプではなかった。映像を撮る人を描いた作品なんて無かったし、新しい漫画だなと思いました。

さらにここから約1年後の2018年8号にて『アクタージュ』の連載が開始する事になります。

おぉ!!あの読み切りの漫画がついに連載に!!!と思ったかどうかは正直全然覚えてないんですけどね。だって全然違ったし。

そんな感じで、この読み切りから全てが始まったのです。俺の大好きなアクタージュという名作漫画が。

これから少しずつ、アクタージュという作品を振り返って感想かいたりなんやかんやしていきたいと思います。

この記事を書いている今日(2021年8月8日)現在では、アクタージュは連載休止中です。正しくは『打ち切り』という表現なのかもしれませんが、そうなった理由も含めて仕方ないという思いと、できれば続きが読みたい。復活して欲しいという気持ちがあり『休止中』と俺は言いたい。

もし、これを読んでいるあなたが『最近復活したらしいアクタージュとかいう漫画がどんな漫画か気になる』という気持ちでここを訪れていたのだとしたら、俺としてはとても嬉しいなと思います。

もちろんそうでなくとも。アクタージュという作品が好きでたまらないという人でも大歓迎です。

頑張って今後も書き続けていきたいと思います。少しでも、人の心に残ればいいなと思いながら。